はじめに

家庭教師は、お子さまの学習を支える大切なパートナーです。しかし、業者選びを誤ると、高額な教材を購入させられたり、約束と異なるサービスを提供されたりするトラブルに巻き込まれる可能性があります。

当団体は30年以上にわたり、消費者被害の記録と相談対応を行ってきました。その経験に基づき、家庭教師を選ぶ際に保護者の方に確認していただきたい事項をまとめました。


契約前の確認事項

1. 料金体系は明確か

信頼できる業者は、契約前に費用の全体像を明確に説明します。以下の項目について、具体的な金額が提示されているかを確認してください。

  • 入会金
  • 月々の指導料(1回あたりの時間・回数・単価)
  • 管理費・運営費等の名目料金
  • 教材費(教材がある場合)
  • 交通費

注意すべき点:
「入会金無料」と表示しながら、「登録料」「教務費」などの別名目で同等の費用を請求するケースが、過去に行政指導の対象となっています。

出典: 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」(https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/)

2. 教材の購入は必須か

家庭教師の契約において最も注意が必要な点の一つが、教材費の取り扱いです。

確認すべきこと:
– 家庭教師の指導に、業者指定の教材の購入が必要とされているか
– 教材がある場合、その費用はいくらか(3年分、5年分の一括購入になっていないか)
– 教材費は家庭教師契約と別の契約になっていないか

当団体が記録してきた消費者被害の多くは、「家庭教師派遣」を名目としながら、実態は数十万円の高額教材販売が主目的であるケースでした。

家庭教師の指導自体には、学校の教科書やワーク、市販の参考書で十分対応できる場合が大半です。「この教材がないと5教科教えられない」「教材があれば成績が上がる」といった説明には注意が必要です。

3. 契約書面の内容は適切か

特定商取引法により、家庭教師の契約(2ヶ月超・5万円超)では、事業者は以下の書面を消費者に交付する義務があります。

  • 概要書面(契約前に交付):サービスの概要、費用、解約条件等
  • 契約書面(契約時に交付):契約内容の詳細

契約書面には、以下の記載が法律で義務付けられています。

  • クーリングオフに関する事項(赤字・赤枠で表示
  • 中途解約に関する事項
  • 関連商品に関する事項
  • 事業者の名称・住所・電話番号・代表者名

書面が交付されない場合や、記載内容に不備がある場合は、法律違反の可能性があります。

4. 解約条件は明確か

契約前に、以下の点を必ず確認してください。

  • クーリングオフの期間と手続き方法
  • 中途解約の手続き方法
  • 中途解約時の精算方法(解約料の計算方法)
  • 教材がある場合、教材の返品・返金の条件

法律上、中途解約時に事業者が請求できる解約料には上限があります。法定上限を超える解約料を定めた契約条項は無効です。

5. 家庭教師の選考・研修はどうなっているか

家庭教師の質は、サービスの根幹に関わる問題です。以下の点を確認することをお勧めします。

  • 家庭教師の選考基準(学歴、指導経験、適性検査等)
  • 研修制度の有無
  • 家庭教師の交代が可能かどうか、その条件
  • 指導報告の仕組み

注意が必要な勧誘パターン

電話勧誘

突然の電話で家庭教師の勧誘を受けた場合は、慎重に対応してください。当団体の記録では、電話勧誘は高額教材の販売に繋がるケースが多く見られます。

信頼できる業者は、保護者からの問い合わせに応じてサービスを説明するのが一般的であり、突然の電話で積極的な勧誘を行うことは通常ありません。

「無料体験」からの契約誘導

無料体験や無料の学習相談を入り口として、訪問時に契約を迫るケースがあります。体験授業の目的は、お子さまとの相性やサービス内容を確認することにあります。その場で契約を急かされた場合は、冷静に検討する時間を確保してください。

オンライン広告の低料金表示

近年は、インターネット広告で「1コマ約3,000円」などの低料金を強調しながら、実際には高額な教材費が別途必要となるケースが報告されています。

2025年7月には、このような手法による消費者トラブルが東京都消費者被害救済委員会に付託されました。広告に表示された料金だけでなく、契約全体の費用を確認することが重要です。

出典: 東京都消費生活総合センター「消費者被害救済委員会への付託について」(2025年7月18日)


チェックリスト

家庭教師を契約する前に、以下の項目を確認してください。

  • [ ] 入会金・指導料・管理費・教材費など、費用の全体像が書面で明示されているか
  • [ ] 教材の購入が必須でないか(必須の場合、その金額と返品条件は明確か)
  • [ ] 概要書面・契約書面が交付されたか
  • [ ] 契約書面にクーリングオフの記載が赤字であるか
  • [ ] 中途解約の条件と精算方法が明記されているか
  • [ ] 家庭教師の選考基準や研修制度について説明があったか
  • [ ] 家庭教師の交代が可能かどうか確認したか
  • [ ] その場で契約を急かされていないか(冷静に検討する時間があるか)
  • [ ] 事業者の正式名称・住所・電話番号を確認したか

トラブルに遭った場合の相談先

家庭教師の契約でトラブルに遭った場合は、一人で悩まず、以下の窓口にご相談ください。

相談先連絡方法備考
消費者ホットライン188(局番なし)最寄りの消費生活センターに繋がります
最寄りの消費生活センター消費者センター一覧または188で案内契約書や関連書類をお手元にご用意ください

クーリングオフの期間内(契約書面受領から8日間)であれば、理由を問わず無条件で契約を解除できます。 期間が過ぎた場合でも、中途解約や、書面不備によるクーリングオフの延長が可能な場合があります。

「解約はできない」「教材は返品不可」「消費者センターに相談しても無駄」──こうした業者の説明は、法的に認められない虚偽の主張である可能性が高いです。

出典: 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供Q&A」(https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/continuousservices.html)


引用元一覧

当団体所蔵の一次資料

  • 消費者相談記録および被害申出書(1998年〜2005年、当団体所蔵)
  • 家庭教師優良業者全国ネットワーク自主規制規約(2002年10月15日施行)

公的機関の情報源

  • 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/
  • 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供Q&A」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/continuousservices.html
  • 国民生活センター 消費者トラブルFAQ「学習塾・教室、家庭教師」 https://www.faq.kokusen.go.jp/category/show/101
  • 東京都消費生活総合センター「消費者被害救済委員会への付託について」(2025年7月18日)
  • 消費者ホットライン:局番なしの188